March 07, 2004

防災用RFIDのセキュリティ要件に関する考察

滝澤 修,田中 秀磨,山村 明弘,
防災用RFIDのセキュリティ要件に関する考察,
2004年暗号と情報セキュリティシンポジウム(SCIS2004), Jan 2004.

災害時の「情報伝達手段」としてRFIDを利用することを研究しており,その際に必要となるであろうセキュリティ上の要件について検討,整理した論文である

セキュリティの論文として読むよりもRFIDのアプリケーションとしてこんな使い方もあるな.と考えさせられてしまった論文である(こういう使い方が普通なのかな? 無知すぎ? > 自分).RFIDの災害時の使い方としては3つの方法が提案されている.

1. 消防活動が困難な空間における消防活動支援情報システム
災害時には消防退院は壊れかけた建築物の中に入らなければならないが,そういった場合に迷子になることが知られている.これを防ぐために建物内の非常灯や避難路案内灯にRFIDをつけ,災害時にはRFIDから位置情報を発信できるようにしておく.災害時に消防隊員が建物内に入った場合には種々の方法に加えて非常灯などのRFIDから位置情報を取得することによって,倒壊している建物内でも現在地を確実に把握することを可能にする.

2. レスキュー用データキャリアによる被災者探索システム
理化学研究所等が研究しているシステムで,各建物の屋根に音声録音可能な機能を持つRFIDを設置しておく.災害時にはセンターからの信号によってこれらのRFIDが起動し,建物内(周辺)に向かって「どなたかいらっしゃいますか? 被災状況はいかがですか?」と呼びかける.これに被災者が応答した声をRFIDが録音する.これらの録音された情報は飛行船等の飛行物体によって情報が収集され,災害救助センターに通知される.これによってどこの建物にどのくらいの被災者や被害状況がでているかをより早く,確実かつ具体的に収集することが可能になり,ひいては救助作業に役立てることができる.

3. 無線タグを用いた非常時情報転送システム
この論文の筆者らが研究しているシステムで,街中の電柱や家屋の壁などにRFIDを設置しておく.災害発生時には,電柱のRFIDからは現在の送電状況を周囲に発信したり(「この周辺は現在停電中」),周囲近隣の人がこの周辺の被災状況など災害救助に役に立つ情報を記録しておくことができる.また家屋に埋め込まれたRFIDには,その家の住人に関する状況を記録しておき,あとで救助隊が来た時に災害救助に役立てることができる.つまり「この家の居住者は全員無事,市民ホールに非難している」と記録しておけば,救助隊は,この建物の調査を省略し,次の建物の調査にすすむことができる.また工場などの場合は「この工場内には危険物が残されている.安易に近寄るべからず」と記録しておけば,二次災害を防ぐことが可能になるというものである.

これらの防災用RFIDのセキュリティについて大事なことは「RFIDが移動しない」ということである.つまりlocation securityと呼ばれるPrivacy侵害の恐れはない.と言えるのである.逆に問題は,破壊行為や故障に対する耐性があることと,記録された情報の読み取りを誰ができるようにするのか? という問題がある.記録される情報は暗号化される.そのため誰でも読めることができるわけではなくなってしまうが,これが本当に災害時の救助支援として問題ないだろうか? とか,記録する際にも正規のユーザのみが書き込める領域と,誰でも書き込める領域を用意することで,記録されている情報の信頼性についても考慮する必要があると考えられる.などなど(一部私的考察あり)である.

Posted by z at March 7, 2004 02:54 AM