December 05, 2004

Milestones in Time: The value of Landmarks in Retrieving Information from Personal Stores

Meredith Ringel, Edward Cutrell, Susan Dumais, Eric Horvitz,
"Milestones in Time: The value of Landmarks in Retrieving Information from Personal Stores",
Proceedings of Interact 2003, pp.184--191, September 2003.
Interact 2003 / Project web page

個人が持つ情報(Personal Contentsと書かれている.ようするに個人の計算機内に保存されている情報と推測)の検索結果を表示(提示)する方法として,時間軸表示を用いた場合の表示手法に関する考察とデザインについて述べている.この研究で提案している時間軸に基づく情報視覚化は、時間軸ベースで概要と詳細を見ることのできる表示法(Overview-plus-detail timeline visualization)であり,さらに公的な指標(public landmarks - 国民の祝日や公的な重大ニュース)や私的指標(personal landmarks - 写真や私的なイベント)を検索結果とあわせて提示することで、検索結果からの情報取得を容易にするという拡張を行っている.

人は正確な時間を覚えていることはほとんどないが,一方で重大事件が発生した時の「日付」や「おおよその時刻」などは覚えており、かつしばしば思い出すことがある(例: JFKの暗殺された日とかアメリカ同時多発テロの発生したSep 11とか).この研究では検索結果の提示法として時間軸表示にこのような重大事件等の情報をコンテキストとして与えることで個人の持つ情報の検索を支援することを試みた.ここで与えられるコンテキストは論文ではlandmarksと書かれているが、公的なもの(public)と私的なもの (personal)とがあるとしている.この研究では,視覚化システムに公的および私的事件の情報を検索結果とあわせて提示することで,その周囲や前後の記憶を呼び覚ます目印(cue)とし、それらが個人の情報検索において有用な閲覧/検索の目印にするとしている.

Landmarkは4種類用意されており,休日,ニュースのヘッドライン,写真およびカレンダー内の約束情報(appointment)である.前者の2つは公的landmarkで,後者の2つは私的landmarkとなる.これらには優先順位をつけることができ,ユーザの好みや状況に応じてフィルタリングを可能にし、表示/非表示の制御を可能にしている.

これらの仕組みには「エピソード記憶」を利用しようという意図がある.エピソード記憶とは記憶の概念の一つであり、エピソードによって組織化された記憶のことを指す.エピソードにはどこで発生した事象か?(場所),誰がそこにいたか? その事象の前後で何が起きたか? などの情報が含まれると考えられている.またある研究では,人は重大事件などの事象を過去の記憶を整理する際に使用するとも言われている.また他の研究では,写真やビデオを見せることにより,忘れていた作業内容をより詳細に思い出すことが可能になると述べていたり,そのためには思い出すべき内容ときっかけとなる情報の間の依存性が重要になると述べた研究がある.また記憶は個々のコンテキストだけでなく,より汎用的なコンテキスト,つまりその事象を取り囲む状況すべてに依存すると指摘する研究結果もある.

視覚化画面の詳細については論文を参照して頂きたい.ユーザ評価は12人で全員男性、25-60歳の人で行った.110通のメールを被験者全員に渡し、各ユーザのmailboxに併合しておいてもらう.そして実験前にTutorialを行ってもらい、ある程度の操作方法に習熟した状態にした.そして被験者を2グループに分け、片方のグループにはlandmarkなしの時間軸表示で、もう片方のグループはlandmarkありの時間軸表示でそれぞれ検索を行ってもらった.なお全被験者に30 回の試行を行ってもらい、15回行ってもらった後にlandmarkあり/なしの条件を変えて残りの15回の試行を行ってもらった.で、その評価結果であるが、landmarkありの方が検索は早く行うことができていた.

また実験前と実験後にアンケートを行った.実験前のアンケート結果では、被験者が有用であると考えている検索のための属性情報は,topic, peopleそしてtimeという属性情報であった.既存の検索ツールはtopicやpeopleによる検索を可能にしているが、その一方で,時間による検索は可能にしたシステムがあまりない.そして公的landmarkよりも私的landmarkの方が,事象の想起(過去の回想)をより容易にするとユーザは答えていた.

実験後のアンケート結果から,我々の時間軸表示システムは受け入れられたと言うことができるだろう.が、追加意見として、あるユーザは時間軸を逆方向にするオプションがあってもいいのではという提案をしていたりもした.本研究では、将来的には「上司とproject reviewをする直前に自分が書いていた書類全て」とか「地震のあった週に受け取った全てのe-mail」といった検索を可能にするのが目標であるとしている.

追記:
このシステムの背後で使われている(Desktop?)検索エンジンはStuff I've seen(SIS)と呼ばれるシステムのようである.論文はSIGIR 2003で発表されているそうである.
参考文献として Lifelines, Time-machine computing, Forget-me-Not, Save Everythingなどが挙げられていた.

なるほどなと思う、個人的に驚くような評価結果はなく、予想した通りの結果である.が、アイデアとして自分の「保持している情報」だけでなく、検索結果に自分に関連する情報を統合して表示することにより、ユーザに検索結果の取捨選択または絞り込みを可能にするというのは悪くないアイデアだと思う.

Posted by z at December 5, 2004 03:55 AM