November 11, 2007

GPS付き携帯電話による人の監視

GPS機能付き携帯電話のいわゆる「監視利用」が思わぬところから始まりそうである.

交番の警官にGPS携帯・警視庁、管理強化へ - NIKKEI NET
防衛省、GPS携帯による幹部の監視を検討 - ITmedia

当方は懸念する.こういう公官庁から監視という目的で携帯電話を使い始めると、こういうことは「是」なんだと多くの一般市民が勘違いし、合法(お手本)として様々なところで同様のことが行われるようになりかねないからだ.

これまでなぜ携帯電話キャリアが、この種のサービスを提供してこなかったのか。これをもう一度よく考えてみる必要があるだろう.それは、これらの記事のように人の監視につながる利用がなされることを懸念したからに違いない.それによって携帯電話キャリアがプライバシー侵害を幇助したとして訴えられる可能性すらあったから.今でもこの種のサービスは家族契約の端末間だったり、利用回数が制限されていたり、事前登録が必要であったりするうえ、監視される端末側でも位置情報の送信を許可する設定が必要であったりと、いくつかの設定項目によりプライバシーの無断侵害を防止できるようになっている.そのくらい慎重な対策を施された上で提供されている機能なのである.

それをお上(警察/防衛省)が、問題の原因追及もしっかりなされないうちに安易に「GPS携帯で幹部/警察官を監視すればいいのだ」と始めてしまうのはあまりにも安易ではないだろうか? またこの実施に関しては「本対策は、あくまで特殊事例として実験的に行うものであり、一般企業や市民においてこういう監視行為は安易に認められるべきことではない」という程度の声明は出しておくべきではないかと個人的には思う.

CMUJの武田氏もこれらの記事に関して意見を述べている.

GPS携帯による各省庁幹部と国会議員の監視について
営業マンにGPS携帯・管理強化へ?

当方の意見を思うがままに書いてみる

- そもそも監視することで、一連の不祥事が防げるのか? 問題をよく把握した上で、それに対して解決策を考えないといけない.当たり前のことである.が、GPS携帯で監視をしたとして、それで不祥事が防げるのかは疑問である. 居場所がわかったとしても、それが不祥事防止になるとは思えないのだが、みなさんはどうお考えだろうか? 「ないよりマシ」という考えが、一般的にはよく言われるが、こういう問題はマシになる程度よりも、それによる副(反)作用も考慮しなければならず、それがマシになる効果よりも大きな場合、やらないほうがマシ.という結論になることもあると考える.

- GPS携帯による監視の限界はわきまえておくべきだ.技術うんぬんもしかることながら「携帯電話を持ち歩くのを忘れてた」と言われればそれまでである.

- 職務中のGPSによる監視はプライバシー無視になるのだろうか? 個人的見解としては、防衛庁の幹部や警察官に限って言えば、公務中に関してはプライバシー保護よりも勤務状況と居場所の把握の方が重要だと考える.不祥事防止になるかどうかは疑問ではあるが、その行為自体は肯定的に見てもよいのではと考える.

- 携帯電話である必要があるのだろうか? 居場所のログを記録するだけならば、携帯電話ではなく他のGadgetでもよいと考える.緊急連絡のために携帯電話ということだが、こういう職務における職員の緊急連絡には、それ専用の通信手段を持っていて欲しいと思うのは当方だけ?

Posted by z at November 11, 2007 10:46 PM