April 22, 2005

Lost in Memories: Interacting With Large Photo Collections on PDAs

Susumu Harada, Mor Naaman, Yee Jiun Song, QianYian Wang, Andreas Paepcke,
"Lost in Memories: Interacting With Large Photo Collections on PDAs",
Joint Conference on Digital Libraries (JCDL2004), pp.325--333, June 2004.
IEEE Xplore

この論文は、PDAで大量の写真を見るための写真ブラウザを2種類開発し、それらのユーザ評価を行った論文である.
1つ目の写真ブラウザは、folderベースの配置を利用した写真ブラウザで,ユーザが構築したフォルダ階層でもシステムにより構築されたフォルダ階層でも利用できる.
もう1つの写真ブラウザは縦軸方向に時間軸をおき,ズーム可能にしたインタフェースを持ったブラウザである.このブラウザは,ユーザが写真を組織だてて管理する必要はないかわりにシステムが生成する管理手法に依存する仕組みとなっている.このシステムでは写真の時間に基づいてクラスタリングしている.これにより互いに関連する写真をグループとしてまとめ、それを階層構造的に保持できるようにしている.
ユーザ評価では,500枚から3000枚の写真を使ってもらったが,時間軸ベースの写真ブラウザは,検索とブラウジングにおいて既存の写真ブラウザと同様の効率であるという結果が得られた.

問題点は,大量の写真の小さな画面上での検索とブラウジングの問題を解決(改善)することである.妥当な方法としては注釈や撮影場所等の metadataを付与し,それによって特定の写真を得ることだが,多くのユーザはそのようなmetadataを付与する作業をしないし、やりたがらないのが現状である.
またPDA等でそのような検索語を入力するものやっかいである.しかし、その一方で、検索やブラウジングの支援をするための画像処理による特徴抽出技術も未成熟である.

そこでデジタルカメラが写真に添付する属性情報(EXIF?)を利用し,それをPDA上で利用する際のインタフェースについて考察する(とはいっても写真撮影時刻しか使っていない).
このような手法はすでにPCでは「Time as Essence for Photo Browsing Through Personal Digital Libraries」という論文で報告されているが,我々はPDAでの利用について考察した.この場合,Backgroundで使用するアルゴリズムは同一であっても,インタフェースについては一から考察し直す必要がある.

写真について一般に言われていることは,
1. 写真にとって年代別(時間軸)分類は重要
2. 写真の撮影時刻とイベントとの関連は密接
3. イベント毎にまとめるという方法は写真整理において最も自然な方法 (運動会の写真、夏旅行の写真など)
4. 時刻が写真にとって最も強力な想起のきっかけではない.その契機となる力が強力な順に言えば
「誰と」「どこで」「いつ」の順になる

この研究では2種だが,3つのブラウザを用意し,実験を行っている.
BM - フォルダベースブラウザ - マニュアル,つまりユーザが手作業で写真整理(組織化)
BA - フォルダベースブラウザ - システムが自動で写真整理(組織化)
TL - 時間軸ブラウザ

フォルダベースブラウザには4つの画面モードがある.
(1.2.3.の画面イメージは論文参照)
1. 現フォルダの写真とサブフォルダを表示する(Opening-Game screen)
2. 現フォルダの写真のみを格子状に表示する(Middle-Game(Thumbnail) screen)
3. 選択した画像をPreview表示する(End-Game(Preview) screen)
4. 特定画面の全画面表示

時間軸ベースブラウザには3つの画面モードがある
(1.の画面イメージは論文参照)
1. 時間軸と10個のアルバムを表示する(Opening-Game screen)
2. 指定されたアルバムの写真を格子状に表示する(Middle-Game(Thumbnail) screen)
3. 特定画面の全画面表示
# ここで言うアルバムとはクラスタリングにより生成されたクラスタに基づく写真群のことを指す

時間軸ベースブラウザでは,時間軸をなぞることで時間ベースのZoomingができ,また写真の周囲にstylusで丸を描くことでflipすることができる対話機能がついている

時間軸ベースブラウザでは「Time as Essence for Photo Browsing Through Personal Digital Libraries」という論文で報告されている,時間ベースのクラスタリング手法を用いており,木構造化されたクラスタリングがなされる.これにより得られる各クラスタをアルバムとして扱うことで,時間軸ベース
でのアルバム(写真群)を生成している

そして17人のユーザで検索とブラウジング作業を行ってもらい,ユーザ評価を行った
検索は特定の写真を探してもらう作業であり,ブラウジングはあるテーマを与え,それにふさわしい画像を可能な限り探してもらうという作業である

■ 検索作業
最短検索時間での結果としては
TL < BM < BA
の順であった.しかし,それらの時間に大きな差は見られなかった.
ただし,その操作に慣れるにしたがい,時間軸ブラウザでの検索時間は短くなっていった.

作業完了時刻で比較すると,時間軸が他の二つのフォルダーベースよりも短い時間で完了していた.
しかし,フォルダベース(自動整理)で実験を行い,次にフォルダベース(手動整理)を行った9人のユーザについては,時間軸ベース(TL)とフォルダベース(BM)での作業時間に差はほとんどなかった.

3分間での作業完了率を見ても時間軸ベースのブラウザがもっともよい結果であった.
TL(95%) < BM(80%) < BA(75%)

またナビゲーションの効率性として,バックやホームボタンを使った回数で評価した場合も以下のような結果となった.
TL < BM < BA
特にBAはその回数が多かった

■ ブラウジング作業
作業時間は2分間,見つけた写真の枚数で評価したが,ブラウザ間でそれほど差はなかった.平均して4,5枚を見つけ出している.

またTLの検索作業における評価結果として,どのレベルの時間軸表示を
使っていたか? という結果として以下のようか結果が得られた
サムネイル > 日レベル > 年レベル > 月レベル > 週レベル

またdragging zoomやflip機能はほとんど使われなかった.

■ コメント
そしてユーザからのコメントとしては以下のようなものがあった

- サムネール画像の大きさが小さい
- Baseline browserのpreview screenへの改善要望がインタフェースへの 要望しては一番多く,前後の写真をもっと見せて欲しい(現状は2枚づつ)とか現在の写真の全体の中での位置(12 of 47)が欲しいといったコメントがあった
- スライドショウ機能が欲しい
- 画像の大きさを変えて見たい.そのためにstylusによるgesture機能を追加して欲しい.

結果として,写真の自動整理(自動組織化) + 時間軸インタフェースは次世代写真インタフェースの基本となるだろうと確信した.

ふーん...なるほどね〜.

Posted by z at 03:24 AM