May 31, 2007

Paper: Grow and Know: Understanding Record-Keeping Needs for Tracking the Development of Young Children

Grow and know: understanding record-keeping needs for tracking the development of young children,
Julie A. Kientz, Rosa I. Arriaga, Marshini Chetty, Gillian R. Hayes, Jahmeilah Richardson, Shwetak N. Patel, Gregory D. Abowd
Human Factors in Computing Systems(CHI2007), pp.1351 - 1360
ACM Digital Library

5才までの子供の成長と学習はそれ以降の人生に大きく影響する.定期的に小児科医にかかり、子供の成長経過を詳細に記録することは、知恵遅れや障害の早期発見に役立つ.しかし、新人の親は新たなに生じる責任に圧倒されそれどころではない.そこで技術がそれを支援できないかと考えた.この論文では、親と子供を世話する人たちによる成長記録とその解析を支援するための要件を調査した.インタビューを通じて、親が持っている根拠に関する仮定を確認するとともに、記録継続のための技術要件を調べた.

以下は論文内容のメモ書き


■ Introduction and Motivation
- 障害や知恵遅れといった問題の兆候は2才から6才のあたりのどこかで現れてくる
- 早期発見すれば、治癒可能性が高い
- 一つの方法は、成長過程で何らかの問題や遅れが見られたら、小児科にかかることである
- Centers for Disease Control and Prevetion(CDC)は、新米の親向けに、250ものマイルストーンを提供し、成長過程が正常かどうかを確認できるようにしている.

- すべての子供にとって成長記録をつけるのは、公衆衛生(?)上非常に重要だが,それは親にとって無理難題
- ま何を記録すべきか、何がいつまでに達成されなければならないか、どうなったら成長尾が遅れているのか?といった知識もない

- 感傷的な理由に基づく記録はすでに行われている.(写真や動画,歯が生えたことなどを成長日記に書き留めるなど)
- 技術によってこれを拡大し、退屈な作業を簡単化し、そして感情的記録としても有効なことを示して記録を動機付けできないか?
- 子供の成長記録を記録可能にする技術支援手法とその設計要件を探求する
- インタビューによる調査
-- 新米の親
-- すでに子供のいる親
-- 子供の世話をする人たち
-- 医療関係


■ Related Workd
心理学や教育分野で研究が進んでいるが、HCIではまだ

□ Supporting New Family Needs
家族の感傷的記録を残すためのシステムという研究はある.
健康診断を目的とした成長記録システムはない
□ Early Detection of Development Delay
成長障害の特定を目指した多くのシステムは、特定の兆候を識別することに注力している
□ Coordinating Care
子供の世話は共同作業.チーム作業の支援が必要
Computer Supported Cooperative Care(CSCC)という言葉もある
老人介護の研究がある(The Digital Family Project)
□ Understanding Needs for Health and Wellness
健康管理技術に関する設計要件、老人介護における設計要件、認知障害者支援のための設計要件などの研究あり
□ Persuasive Technology
親がきちんと子供の記録を残せるような技術には、ある程度の動機付けが必要「Persuasive Technology」
子供の健康的な成長と、老人の健康的な老いには共通点あり


■ Study Design
- 利点と必要性、現行システムの欠点を確認するためにインタビュー
■ Target Stakeholders
□ New or Expecting Parents
新米の親、または近いうちに親になる人
□ Experienced Parents
すでに子供を育てた経験のある人
□ Secondary Caregivers
ベビーシッター、乳母、デイケア
□ Mediacal Professionals
医療関係者


■ Interview Paticipant Details
■ Focus Group Details
□ Daycare Focus Group Participants
□ Medical Professional Focus Group Participants
■ Analysis Methods and Results
■ Analysis Method
なぜ親が子供の記録に関して技術的支援を必要とするか? その根拠として6つ
R1. 成長過程を記録する時間がない
R2. できるだけよいよい成長をとげて欲しい
R3. 記録時刻を後で知る必要があるため
R4. 観察していたイベントを記録し忘れる
R5. 子供の記録を残さなければという動機があるため
R6. 成長記録や写真を他人と共有したいため

技術的支援が必要とされるか? 9つの機能概要
F1. 入力データにリマインダー(注意喚起)を付与するため
F2. 子供の健康や成長を監視し、異常時に警告させるため
F3. 記録の自動化のためにセンサーを使用する
F4. なんとか記念を作ったり写真を撮り,友人や家族と共有する
F5. 心配事がある場合に、健康情報を提供して相談するため
F6. 子供に関する健康記録と感傷的記録を一元管理するため
F7. 複数の介護人が、情報入力できるようにするため
F8. 健康ならびに感傷的記録の双方の目的で写真や動画を記録するため
F9. 親に情報や経験の共有機会を与えるため、また信用できる情報源からの情報を得るため


■ Results - Emergence of Trends
- 新米の親、経験ありの親、介護する側の3つのグループでデータ集計
- 根拠には、平均して61-83%の割合で賛同
- 3つのグループで差異は見られない
- 基本的に、どのグループでも技術的支援は必要だと思っている
- 介護者はR2(親はよりよい成長をとげて欲しいと思っている)に強く賛同
-- 親は介護者が潜在的な問題を発見してくれれば,よりよい成長になると思い込んでいる
-- 働いている親は、そういった兆候を見落としがち
- コンピュータによる記録支援は、新米の親よりも経験ありの親や介護者に強く指示されている
-- R3, R4の結果がそれを示している
-- 新米の親は楽観視しているが、経験ありの親と介護士は現実を知っている
-- F7の結果もそれを示していると言える


■ Results - Emergence ot Themes
- 想定外のテーマや根拠、機能がないかを調査
- 8つのテーマを抽出

□ Customized Records for the Individual Child
- 子供に応じて,男女差、文化的違いも考慮してカスタマイズできるように
- 「この子は三週間も早く生まれているので、まだそれができなくても問題ないです...」
□ Supporting Interactions with Pediatricians
- 医者としては成長記録を取って欲しいのだが,それは難しいらしい
-- 「成長記録チェックシートを用意していて、親に渡すのだが,チェックをしなかったり、持って帰らない親すらいる」
□ Difficulties with Capturing Records
- 時間がない、写真や動画をとっても整理できない、動き回るようになると...、二人目三人目は記録する動機がなくなってくる
- 写真や動画の共有も簡単でない、またプライバシー問題の懸念もある
□ Record-Keeping is Not for Everyone
- 必要とも欲しいとも思わない、マイルストーンに固執し過ぎもどうかと、動画記録はプライバシーの問題もあるし、そもそも気分が悪い、介護者は親に監視されていると思い、負担になる.経済的理由でそういった機材を導入できない家庭はどうするのか?
□ Knowing What, When, and How to Record
- 記録をとっても、それから何が異常で何が正常かがわからない、信頼できる情報源がないと、誤った判断をしてしまう、よりより成長マイルストーンと、混乱した場合の信頼できる情報源が必要、マイルストーンの回答がyes/noだけというのも変ではないか?
-- 「おもちゃを想像力豊かに使って遊ぶ...ってどんなことをしたら達成とみなすの?」
□ Reflection and Analysis on Childhood Records
- 記録したデータの解析や確認方法に対していくつかの提案を持っていた.
□ Pros and Cons of Computerized Recording
- 記録の電子化には賛否両論だった.簡単化されるだろうが,不安点も.整理の方法が不十分、データ消失の可能性も.成長記録が物理的に残せない不満.
□ Diagnosing Disabilities and Disorders
- 子供の障害診断には驚かされるらしい.そんなことまで知っていなければいけないのかといった情報を提供しなければいけないことをその時初めて知る.医者の診断でも適当のようにみえることも? 「男女差だから... / しばらく様子を見ましょう」.記録が電子化されることによって、異常の判定があまりにも敏感になりすぎるのも問題があるかも


■ Discussion and Potential Prototypes
■ Key Design Considerations
□ Take advantage of existing motivations
健康目的というだけでは記録は続けられない.感情的記録には動機があるのだから、それを利用せよ
□ The computer should not replace the pediatrician
医者との良好な関係を築き、定期的に診断にかかるのは重要.医者と親の関係を改善するために技術を適用するようにすべきであり、診断を技術ベースなどですべきではない
□ Provide a reliable information source
信頼できる情報を提供し、かつ二者択一的であってはならず、それはカスタマイズできるようにせよ.
□ Provide for effective communication for the child's caregiver
子供を取り囲むいろいろな関係者がデータを入力できるようにせよ.また情報共有を可能にし、かつなんらかの変化を通知できるようにすべき.また遠隔地の親戚や友達と情報交換できるような通信機能も備えるべき


■ Potential Technology Designs
- 二つのシステム実装例

□ Developmental Milestone & Media Repository
- 親は子供の健康に関する様々な情報や画像,動画をシステムに追加可能
- 介護者はそれを見て、マイルストーンに到達しているかを確認
- 信頼できる情報源からの情報提供
- 通信機能付き
- 親への警告と詳細なチェックリスト、ならびに小児科医への予約をすすめる
- 写真や動画の一元管理
- マイルストーン毎のデータ抽出支援
- 介護者によるデータ入力も可能
- 医者への詳細情報の提供
- バックアップ
kid11.png

□ Smart Baby Monitor with Specialized Toys
- Smart baby monitor
- ビデオ録画は後で解析/確認するのが困難
- handtop computerで最近15分間の子供の様子を常にビデオ録画
-- 親や介護者が大事だと思われる兆候を見つけた時にのみ、そのビデオ記録を残しておく

- Wireless sensor-enabled toys
- 子供がそのおもちゃを使って、特徴的な行為をしたときにそれを通知する
-- 「おもちゃを持って、それを振る」といった行為 - 7ヶ月児
kid12.png


■ Conclusion
- インタビューから、子供の記録を取り続けるのに何が必要かを調査した
- 我々の想定した仮定の多くが、インタビューワーによって支持された
- 成長過程を評価するために、子供の成長記録をつける必要があるということと、それがなんらかの形で支援されるべきだということがわかった
- 記録を続けるための動機付けに関して問題があることと、解決されるべき懸念もあることがわかった


よくも悪くも「調査して、必要要件を明らかにしました」論文である.ライフログの一種とも言えるかもしれない.

Posted by z at May 31, 2007 02:33 AM