September 22, 2006

ITは世の中を便利にしたのか? 幸せにしたのか?

あくまで個人的な見解だが、IT(最近はICTと呼ぶらしい(?))が作業を効率化し、生活を便利にし、人を幸せにしている/してきた分野は、まだまだ、限定された分野だけである.と自分は思う.そして、というか、それどころかというべきだろうが、ITを使い始めたがゆえに、今までにはなかった新たな手間や問題、そして種々の脅威を呼びこんでいる/生み出している事が多々ある.とも思う.

ITは出世の道具か? 妨げか (日経ビジネス オンライン)

ITでビジネスを変えましょう!.と言っているが、その一方で「現実にはビジネスを変えるどころか、内部統制とか、情報漏洩とか、情報システムの障害とか、リスクがらみのIT課題が多いですからね〜」とある.これは現状を如実に表していると思う.内部統制は、言葉ばかり先行し、具体的になにをどうしたらよいかわからない.が、法律は可決したので、下手をすれば(なにも対応しないと)罰せられる.そんなわりのあわないことなら、上場しないという会社があっても不思議ではないでしょう.(出世とは関係ないかもしれないが、ITシステムを導入すると、便利さ以上に、持ち込まれるリスクや二次コスト(運用管理やユーザ教育)が大きくなるのは事実だと思う.この事実を考えると、体力のない組織や会社は、IT化に二の足を踏んでもおかしくないし、それが一つの経営判断としてあってもいいと、個人的には思う)

書評: インターネットは「僕ら」を幸せにしたか (ITPro)

上の記事の最後にこう書かれている.「新しい技術には、常に暗黒面がある.便利だからいいじゃないか! と思考を止めてはいけないと思う」.これも事実である.が、思っている以上に「大丈夫だよ」と思っている人が多く、あまり暗黒面(!)に配慮しない場合が多いのではないだろうか?

今のITシステムは、人を幸せにした.とか、生活を便利にした.とか言えるのだろうか? 当方は、「今までになかった、新しい世界を実現してきた」と言うべきなのではないだろうかと思っている.大事なのは、これがすなわち「=人の幸せ/生活における利便性向上」とは言えない点である.

上の記事でも書かれているが、ITシステムには必ずと言っていいほどリスクや悪用例がある.
電子メール一つをとっても、スパムメールやフィッシングメール.そして多数のメール処理に追われて、本来すべき作業ができない(耳が痛い > 自分)などがある.また、ユーザのリテラシーもまちまちであり、その例として、そういったユーザの不適切な文面によるメールによって、いらぬイザコザが起きたりもする.こう見ると、とても幸せになった.とか、便利になったとは言いきれないと思うのだ.

とかく最近は、「ITは便利だからどんどん使うべきだ」とか、「PCも持ってないの? ありえない〜」とか当たり前のように言われ、PCを持っていない人や、メールをしない人にとってみたら周囲から驚きの目で見られるようなことも多いように思うが、逆に、そういう人に話を聞いてみると、意外とそういう人の方が冷静に事態を見ていて、かつ合理的判断をしているなと思う事も少なくない.「今のところ、必要ないから持ってない」とか「メールするのがうっとおしい」とかいう理由でも、それはそれでいいと思うのだ.だって、その人にとってはそうなのだから.それで、その人が不幸になっていない.生活において不便でないのであれば、その判断は至極普通であろう.そういった人たちは、逆に「PCを持つべきだ」という人に聞いてみたいだろう「現時点で何も困っていないし、不幸でもない.なのになぜPCを持たなきゃいけないのか?」と.

ITシステムに限らないが、ITシステムも所詮「道具」であり、それは、その道具を必要とする人が使うことによって「便利さ」をもたらし、その副次的効果としてその人に「幸せ」をもたらすのではと思う.大事なことは、ユーザ(自分自身)がそれを必要としているかを見極めること.そして、それと同時にその道具がもたらすリスクをよく知り、かつ将来的に起こりうるであろうことも考慮したうえで、自分でその道具を手に取るかどうか取捨選択すること.そしてその道具をうまく使いこなし、かつ生じうるリスクをうまく回避すること.これらができるようになって、ようやく利便性や幸せを実感できるようになるのではないだろうか.これを忘れてはならない.大事なことだと思う.そういう意味で、特にITシステムは、落とし穴(Securityリスク/必要とされるリテラシーレベルの高さ)が多いのだ.そんなに多数のリスクが存在しているのにもかかわらず、その回避が現時点では容易であるとは決して言えない状態なのである.なので、ITとは道具であるが、と同時に、ユーザが賢くなり、うまく使いこなす必要がある代物でもあるのである.そして、もし、それをしうるだけの自信がなければ(もちろん自信だけでもダメなのだが...)、学習するなり、指導を仰ぐなり、そしてもちろん「使わない」という選択もありなのだ.

みなさん、友達に言われたから... という理由で、あまり興味のないサービスを利用していたり、IT機器を買ったりしていませんか?

Posted by z at 02:03 AM